肩こり
肩こり
令和元年度の厚生労働省国民生活基礎調査によると、肩こりは男性で2位、女性で第1位の愁訴であり、多くの方が肩こりによる症状に悩まされていることがわかります。
肩の筋肉は常に頭を支える役割を担っているため、この部位は特に疲れやすく、筋肉の緊張を強いられる(こりやすい)と考えられます。肩こりが起こるメカニズムとしては、様々な原因により筋肉が過度に緊張することで、筋肉内の血管が圧迫され、血流が悪くなることによると言われています。その結果として、痛みやこりとしての不快感が感じられると考えられています。
また、肩こりは単なる筋肉の疲れだけでなく、首や肩の関節の異常、腫瘍による神経の圧迫など、他の重篤な疾患が隠れていることもあります。そのため、肩こりが長期間続く場合や、改善しない場合、安静時の痛みも出現するような場合には、専門医の診察を受けることが重要です。
肩こりは日常生活の中で頻繁に感じられる不快な症状の一つですが、その原因は一つではありません。以下に、肩こりの主な原因を詳しく解説します。
長時間同じ姿勢でいることや、前屈みの姿勢での作業などが筋肉に負担をかける。
精神的なストレスが続くと、筋肉が過度に緊張することがあります。
筋肉が固まりやすく、血行が悪くなる。
コンピュータの前での長時間の作業は、首や肩の筋肉に過度な負担をかけます。
物を持ち運ぶ際の不適切な姿勢や、重量物の持ち運びは、筋肉に過大なストレスをかけることがあります。
寒い環境下では筋肉が収縮し、筋緊張を強いられることで肩こりの原因となります。
関節の炎症や変形は、周囲の筋肉に緊張をもたらします。
頸椎椎間板ヘルニアや頸椎椎間孔狭窄症など、神経が圧迫される疾患は、痛みやしびれを伴うことがあります。
これらの原因の中で、自分の生活環境や日常の行動パターンを見直すことで、予防や改善が期待できることも多いです。しかし、症状の改善がない場合や、自分自身での対処が難しい場合は、整形外科専門医の診察を受けることをおすすめします。
肩こりは非常に多彩な症状を呈し、その原因も多岐にわたります。正確な原因を特定し、効果的な治療を行うためには、適切な診断が不可欠です。以下に、整形外科専門医が行う肩こりの診断方法を解説します。
まず、患者様の症状の始まりや持続時間、痛みの場所や性質、前医での治療内容などを詳しく聞き取ります。また、日常生活の中でのストレスや生活習慣、仕事内容なども重要な情報源となります。
頸や肩の動きの範囲を確認したり、特定の動作で痛みが発生するかをチェックします。神経の圧迫が疑われる場合は、特定の検査(Jackson test, Spurling test)を行うこともあります。
X線検査 | 頸の骨(頸椎)の状態をチェックし、関節の変形や椎間板の高さを確認します。 |
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MRI | 神経(脊柱管や神経根)や椎間板、靭帯の状態を詳細に観察します。特に、頸椎椎間板ヘルニアや頸椎症(頸椎症性脊髄症、頸椎症性神経根症)の診断に有効です。 |
超音波検査 | 筋肉や靱帯の状態、関節の炎症などを確認します。 |
必要に応じて、血液検査や神経伝導速度検査などを行うこともあります。これにより、神経の機能や炎症の有無などを詳しく知ることができます。
肩こりの原因は多岐にわたるため、患者様一人ひとりの症状や生活背景に合わせて、最も適切な診断方法を選択します。症状が長く続いている場合や、自分自身での対処が難しい場合は、早めに専門医に相談することをおすすめします。
炎症や痛みの緩和を目的として、非ステロイド性抗炎症薬や筋弛緩剤を使用します。症状に合わせて適切な薬を選択し、服用の際は副作用も考慮して指導します。
温熱治療や冷熱治療、電気治療など、肩こりの原因や状態に合わせた方法を選択します。これにより、筋肉の緊張や炎症を和らげることが期待されます。
筋肉の緊張を緩和し、血行を良くすることを目的とします。患者様の症状に合わせて、効果的な手技やストレッチ方法を指導します。
痛みの原因となる部分に、鎮痛や抗炎症作用のある薬剤を注射します。この方法は、痛みが強い場合や急性期の治療に効果的です。
「首下がり症候群」等の特殊なケースでは、手術をすることがあります。
日常生活の中での姿勢や作業環境の見直しが推奨されます。長時間の同じ姿勢や過度なストレスは肩こりの原因となるため、生活習慣の改善が非常に重要です。
肩こりの治療は、患者様の症状や生活環境、原因を総合的に考慮して、最も適切な方法を選択します。治療の過程での痛みや不安を最小限に抑え、患者様が気持ちよく治療を受けられるよう心掛けています。
肩こりは多くの方が経験する症状であり、一度発症すると再発しやすい傾向があります。しかし、日常生活の中での習慣を見直すことで、予防することが可能です。
仕事中や日常生活での姿勢を意識することが重要です。特にデスクワークを行う方は、背筋を伸ばして座り、パソコンや文書の位置を適切な高さに保つことが大切です。
一定の姿勢で長時間過ごすことは、筋肉の緊張を引き起こします。そのため、30分から1時間に一度は立ち上がって、肩や首をゆっくりと動かすストレッチを行うことを推奨します。
筋肉の柔軟性を保つために、適切な運動を日常的に取り入れることが効果的です。特に、ウォーキングや水泳、ヨガなどの有酸素運動が肩こりの予防, 改善には良いとされています。
精神的なストレスは、筋肉の緊張を引き起こし、肩こりの原因となります。リラックスを意識し、趣味や休息を取り入れることで、心身のストレスを軽減することが大切です。
睡眠時の頸椎の位置が肩こりの原因となることがあります。頭と首を適切にサポートする枕を選ぶことで、肩こりのリスクを低減できます。
肩こりは、多くの人が感じる軽度の不快感として始まることが多いですが、放置してしまうとさまざまな症状や問題が生じることがあります。
肩や首の筋肉が緊張し続けると、それが頭部にも影響し、しびれるような頭痛や偏頭痛を引き起こすことがあります。
肩こりの影響で血流が悪くなると、目の周囲の筋肉や血管にも影響が出ることがあり、目の疲れや焦点の合わせにくさを感じることがあります。
頸椎症が原因での肩こりは手や腕にしびれを感じることがあります。
手や腕にしびれが出現する際には整形外科の受診をするようにしましょう。
肩こりが慢性化すると、肩がこることを避けるための無意識の姿勢が身につくことがあり、猫背や首が前に出る姿勢になりやすくなります。
肩の痛みや緊張感が夜間も続くと、快適な睡眠が取れなくなることがあります。深い眠りに入りにくく、疲れが取れない日が続くこともあります。
肩こりが進行すると、これらの症状だけでなく、生活の質の低下やストレスの増加など、身体的・精神的な健康にも影響を及ぼす可能性があります。
肩こりは日常生活の中で起こる不快な症状の一つです。
症状の軽い場合は肩甲骨を動かすような運動や、僧帽筋を伸ばすようなストレッチが有効です。
症状が慢性化した場合は、上記のようなセルフストレッチに加え、専門家による徒手治療(マッサージ)が有用です。当院では整形外科専門医の診察後に、必要な治療に加えて、柔道整復師による保険適応のマッサージを行うことが可能ですので、肩こりでお困りの方はお気軽に是非ご来院ください。