首の痛み
首の痛み
「くび」の痛みという時に私達整形外科が一般的に考えるのは「頸」という字であり、文字通りに頸椎(首の骨)由来の症状を呈する疾患を思い浮かべます。ただ患者様の中には「くびの痛み」=「頸から肩にかけての痛み」というように表現される方も多いので、最初の問診で患者様がどこの部位の痛みでお困りなのかを把握し、医療者側との認識のギャップを埋める所から「くび」の痛みの診察は始まります。
肩こりは、肩や肩甲骨周辺、首の後ろなどの筋肉に違和感、痛み、こわばりなどの症状が現れる現象を指します。長時間のデスクワーク、不適切な姿勢、ストレス、寒さ、筋力の不足など、多岐にわたる原因が考えられます。特に、現代の生活環境下では、PCやスマートフォンの長時間使用による姿勢の悪化が肩こりの主な原因となっています。
肩こりそのものは病気ではありませんが、長く放置すると頭痛やめまい、視界のぼやけなどの症状を引き起こすことがあります。また、肩こりが続くと心身のストレスが増大し、全身の健康にも悪影響を及ぼす可能性があります。
頚椎症は、主に加齢や首への過度な負担により頸椎(首の骨)や椎間板が変性する疾患を指します。頚椎症では首の本来の構造が変化し、さまざまな症状が現れます。特に現代社会では、長時間のデスクワークやスマートフォンの使用が原因で、若い世代にも頚椎症の患者が増えていると言われています。
首の痛み | 首を動かす際や、長時間同じ姿勢を取っていると痛みが現れることが多い。 |
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肩や腕にかけてのしびれ | 肩や腕にかけてのしびれ。特に首を後ろにそらすようなストレスを加えると症状が増悪することが多い。 |
筋力の低下、歩行障害 | 頸椎症が増悪し、頸椎症性脊髄症といった病態へ移行すると、手や腕に力が入らない、物を落としやすくなる、字が書きにくいなどの症状が出現することがあります。さらに重篤化すると足元が不安定になり歩きにくくなるなどの症状が出現します。 |
身体診察後に、レントゲン検査を行い診断します。症状が強い場合や進行性の場合はMRIを撮影し、神経や椎間板の状態を正確に評価します。
症状のメインが痛みや痺れの場合は保存的治療を行います。消炎鎮痛薬や筋弛緩薬の投与を行い、牽引治療や温熱治療などの物理療法も併用して治療していきます。不自然な姿勢や筋緊張がメインで症状が出現していると考えられる場合は運動器リハビリテーションも有用です。筋力の低下、字が書きにくい(巧緻運動機能障害)、歩行障害といった重篤な症状が出現している場合は手術治療が行われます。
頚椎捻挫は、首の筋肉や靱帯が外部からの急激な力により過度に伸ばされることで生じる損傷を指します。一般的に、交通事故による後部からの衝突やスポーツ中の事故など、急激な加速・減速が首にかかる状況で起こりやすいとされています。特に車の後部からの衝突を受けた際の「むち打ち」症状として知られることが多いです。
「くび」の痛み | 事故直後や数時間~数日後に首や肩に痛みが生じる。 |
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頭痛 | 特に後頭部から頭頂部にかけての痛みが現れることがある。 |
しびれや痛み | 首や肩、うでにかけてのしびれや痛みの症状が現れることがある。 |
首のこわばり | 首の動きが制限され、特に後ろや横に向ける動きが困難になる。 |
事故後、すぐに症状が現れないことも多く、「くび」に違和感や痛みを感じたら、早めの診察を受けることが重要です。
頚椎椎間板ヘルニアは、頸椎の椎間板が変性し、椎間板の後方にある神経や脊髄を圧迫してしまう状態を指します。椎間板は、各頸椎間に存在し、クッションのような役割を果たしています。しかし、加齢や外傷、長時間の不適切な姿勢などにより、椎間板が変性すると、内部の組織が外に飛び出し症状を呈することがあります。
肩周りや腕から手にかけての痛み・しびれ | 飛び出した椎間板が神経を圧迫することで、肩まわりや上肢にかけての痛みやしびれを起こすことがあります。 |
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筋力の低下 | 脊髄圧迫の程度が高度な場合や椎間板の脱出した箇所によっては腕や手の筋力が弱くなる場合があります。 |
身体診察と徒手検査を行い、レントゲン検査も組みわせることで、どの高位の椎間板にヘルニアが生じているかを推測します。症状が強い場合や進行性の場合はMRIを撮影し、椎間板や神経の状態を正確に評価します。
頸椎症同様に保存的治療が原則ですが、痛みやしびれの為に、日常生活に支障をきたしている場合や、症状が進行性の場合は手術治療を行うことがあります。