膝の痛み
膝の痛み
膝の痛みは、多くの人々が経験する症状の一つです。日常の生活やスポーツ活動中に突然痛みを感じることがあります。膝は体の重みを支える重要な関節であり、複雑な構造を持つため、さまざまな原因で痛みが生じます。
痛みの原因は、単なる筋肉の疲労から、変形性膝関節症や半月板損傷、靭帯断裂などのより重度な疾患によるものまで多岐にわたります。
そのため、痛みの原因を特定し、適切な治療を受けるためには、整形外科専門医の診察が必要です。
変形性膝関節症は、関節の軟骨や半月板が摩耗や変形を起こすことで引き起こされる関節病の一種です。軟骨や半月板は、関節の骨同士が直接接触しないようにするクッションの役割を果たしていますが、それが摩耗すると骨同士が直接接触し、痛みや変形が生じます。変形性膝関節症は、特に女性に多く見られ、高齢者になるほど患者数は増加します。
膝関節の痛みや腫れがあるかを確認後に、レントゲン検査を行い診断します。必要に応じて、超音波検査とMRI検査も併用することがあります。
症状が軽度な場合は消炎鎮痛薬の内服や外用剤を使用し、膝関節内にヒアルロン酸の注射を行います。セラピストの指導のもとに、大腿四頭筋の筋力を鍛えるトレーニングや関節可動域改善訓練を行うことも有用です。保存治療で改善がない場合は膝周囲骨切り術や人工膝関節置換術等の手術治療が行われます。また近年では保険適応ではありませんが、保存治療と手術治療の間を埋める治療として、膝関節の再生医療が行われるようになっています。
大腿骨顆部骨壊死は、60歳以上の女性に多く発生します。一般的な変形性膝関節症とは異なり、特に原因もなく急激な膝関節の痛みで発症し、夜間痛を伴うことが多いと言えます。まれに疼痛発作がない場合もあります。痛みとともに膝関節が腫れ、関節液の貯留が見られることも特徴です。
レントゲン検査では発症後1〜2か月は大きな変化は認められません。時間がたつにつれて、大腿骨関節面の内側の骨が扁平化し、透けて見えるようになります。その後、その周囲に骨硬化像が認められ、最終的には変形性膝関節症と同様な変化が認められます。早期の診断にはMRI検査が効果的です。
発症早期や壊死範囲が小さい場合は痛む方の脚にかかる負担を減らし、壊死部へのストレスを避けることで自然治癒することがあります。具体的には杖の使用や、足底板(インソール)、膝関節装具等を使用していきます。病巣が大きい場合は上記の保存治療が奏功しないことも多く、膝関節周囲骨切り術や、単顆型人工膝関節置換術等が行われます。
半月板は膝関節内部に存在する、半月の形をした繊維軟骨組織で、外側(外側半月板)と内側(内側半月板)の2つがあります。これらの半月板は膝関節の安定性を保つ役割を果たし、また、大腿骨と脛骨の間の荷重分散にも寄与しています。半月板損傷とは、これらの半月板が損傷または断裂する状態を指します。スポーツ外傷や特に急激な捻転動作によって発生することが多いです。
身体診察後に、レントゲン検査を行い、より疑わしい症例ではMRI検査を用いて診断します。
若年者のスポーツ外傷等に伴う半月板損傷に対しては関節鏡下の半月板縫合術を行います。中高年の半月板断裂に対しては出来る限り半月板縫合を試みますが、半月板切除に留まることもあります。
膝前十字靭帯(ACL: Anterior Cruciate Ligament)は、膝関節の中心部に存在する重要な靭帯の一つで、膝関節の前後の動きや回旋を制御し、安定性を保つ役割を果たしています。この靭帯が断裂することを「膝前十字靭帯断裂」と呼びます。主な原因としては、スポーツ中の急激な方向転換や膝の捻転、着地時の不適切な膝の肢位などが挙げられます。
前方引き出しテストなどの身体診察に加え、レントゲン検査、MRI検査を組み合わせて診断します。
若年者やスポーツ活動を今後も継続する場合は靭帯再建術の適応となります。スポーツ活動を望まない中高年者には装具療法や運動療法を中心とした保存治療を行います。