脚(太ももから足先)の痛み
脚(太ももから足先)の痛み
脚は私たちの体の中で最も負担がかかる部位の一つです。日常生活の中での移動、立ち仕事、スポーツ活動など、多くの活動に脚が関与しています。そのため、さまざまな原因から脚の痛みを経験することがあります。脚の疾患は痛みだけでなく、歩行や姿勢の問題、さらには全身の健康問題にもつながることがあるため、注意が必要です。
肉離れとは、筋肉が急に引き伸ばされることにより生じる、筋線維または筋膜の部分もしくは完全断裂のことです。二つの関節をまたぐ筋肉に発生することが多く、太もも裏の筋肉(ハムストリングス)が最多で、ふくらはぎの筋肉(腓腹筋)、太もも前面の筋肉(大腿四頭筋)がこれに次ぎます。
アキレス腱断裂は、アキレス腱が部分的または完全に裂ける疾患を指します。アキレス腱は脚のふくらはぎの筋肉(下腿三頭筋)をかかとの骨(踵骨)に結びつける役割を持っています。断裂は、急激な力が腱に加わった時や、腱が既に劣化している状態で過度な力がかかった時に発生します。特に、スポーツや運動中に瞬時に方向を変えたりすることや、ジャンプ動作が引き金となることが一般的で、好発年齢は30-40歳代です。
身体診察を行い、レントゲンで骨折がないことを確認し、超音波検査も併用することで診断します。
保存治療と手術治療の2つの治療法があります。それぞれの治療に長所と短所があり、治療方針は患者様とよく相談して決定します。
アキレス腱周囲には血行の豊富な組織があり、スポーツ等で脚を過度に使用した結果、同部位に炎症を起こし、疼痛が生じる病態をアキレス腱周囲炎と言います。
身体診察を行い、レントゲン検査、超音波検査も併用することで治療します。
局所の安静を行い、アキレス腱にかかる負担を軽減するためにインソールや靴の調整を行います。疼痛が強い場合は局所麻酔薬等の局注も行うことがあります。
足関節捻挫は、足をねじったり、不自然な方向に曲げたりした結果、足関節の周囲の靭帯が部分的に、もしくは完全に断裂することによって起こるケガです。日常生活やスポーツ活動中に頻繁に起こるケガの一つです。特に外側(外くるぶし側)の靭帯が損傷することが多く、受傷後の処置が重要となります。
身体診察、レントゲン検査、超音波検査を併用し、具体的にどの部位の靭帯が、どの程度損傷しているか診断します。
急性期には安静が重要です。包帯やギブスシーネで外固定を行い、局所の安静を行います。その後アイシングや下肢挙上等の処置を行います。
重症度に応じて、固定期間を定め、再度スポーツに復帰するための計画を立案します。
扁平足は、足の土踏まず(足の内側のくぼみ)が低下して、足の裏が地面に平行に接触する状態を指します。この状態は、足のアーチ(土踏まずの部分)が適切に形成されていないか、時間とともに機能が低下してきた結果として発生します。生まれつきのものや、年齢とともに発生するものなど、さまざまな原因で扁平足となることがあります。
身体診察を行い、レントゲン検査、超音波検査等を組み合わせて治療します。
小児期から扁平足である方は無症状のことが多く、経過観察を行います。足のアーチを形成する後脛骨筋の機能不全により扁平足になる成人期扁平足は症状を出しやすく、足底板によるアーチサポートや足内在筋機能訓練を行います。
外反母趾は、足の親指が、人差し指(第2趾)のほうに曲がり、親指の付け根の関節(MTP関節)の突き出た部分が痛む状態を指します。主に靴を履いた際に、その突き出た関節部が靴に当たって痛むようになりますが、症状が進行すると何もしていない状態でも痛むようになります。外反母趾は、特に遺伝的な要因や足の構造的な特徴、不適切な靴の選択などが発症のリスク因子と考えられています。
身体診察とレントゲン撮影を行い、外反母趾の重症度を判定します。
保存治療では履いている靴を見直し、足型にあった靴を履くようにします。運動療法としては足の指や足底の筋肉を鍛え、正常な足の構造を取り戻します。またオーダーメイドの装具も作成し、足のアライメントを整えることも除痛に有効です。上記の保存治療を行っても、痛みのため日常生活に支障が出る場合は手術治療が行われる場合があります。
足底腱膜炎は、足の裏にある厚い腱膜が、かかとの骨(踵骨)との付着部で傷つくことによって起きる病気です。この腱膜は、足のアーチを支え、歩行時に足底にかかるストレスを吸収する役割を果たしています。足底腱膜炎は、長時間の立ち仕事や、不適切な靴の着用などが原因となり、症状が出現します。特に中年女性に多く発症し、朝、起床して最初の1歩目に痛みを強く感じ、歩くうちに徐々に痛みは改善しますが、歩行量が増す夕方になるにつれて再度痛みが増悪するのがその特徴です。
身体診察を行い、痛みのある箇所を確認すると共に、レントゲン検査で骨棘(骨のトゲ)や石灰化がないかどうかを確認します。
保存治療がメインとなります。アキレス腱や足底腱膜のストレッチを行い、足裏のクッションを高め、足部のアーチを高めるような足底板を作成します。消炎鎮痛薬の内服や外用も合わせて使用します。
痛風は、尿酸の異常な蓄積によって引き起こされる疾患で、関節に急性な炎症を引き起こします。尿酸は体内の代謝産物で、通常は尿中に排泄されます。しかし、尿酸値が異常に高くなり、関節に尿酸の結晶が堆積すると、痛風の発作が起きます。一般的に、足の親指の付け根(MTP関節)に発作が出やすく、急激な疼痛と腫れを伴います。他に足首や足の甲、アキレス腱、手関節、膝関節にも発作が生じることがあります。
特徴的な症状により痛風を疑い、レントゲン検査や超音波検査で痛風結晶の有無等も確認します。また血液検査を行い尿酸値を確認すると共に他の生活習慣病が隠れていないかを精査します。
発作時は消炎鎮痛薬を投与し、関節炎を鎮静化させます。炎症が落ち着き、痛風発作が落ち着いてから尿酸値をコントロールする薬剤を開始します。